前編からの続き。時刻は13時半過ぎ。
タクシーで「致道博物館」へ移動する。庄内藩主酒井家の御用屋敷地だった場所に国指定重要文化財の旧西田川郡役所や旧渋谷家住宅(多層民家)、旧鶴岡警察署庁舎など貴重な歴史的建築物を移築している博物館である。

旧庄内藩主御隠殿内に展示されている庄内藩や鶴ヶ岡城の城下町の成り立ちが面白い。特に町割がかなり緻密に考えられていたというのが印象的で、身分の違いを明確にして秩序を維持すること、日常生活の利便性、敵が攻めて来た時の防衛など、様々な観点から町が作られていたことがよく理解できた。

大きな扉の先なので気付かずに引き返してしまう人が多いようだが、この奥座敷の展示物はしっかり見て損はない。

酒井家伝来の一腰「黒漆塗千段刻打刀拵」。

緑頭に酒井家の家紋「丸に酢漿草紋」が付いている。

鐙や鞭、鞍といった馬具。鞍の感じから察するに、当時の軍用馬は今のサラブレッドよりも小柄だったのではないだろうか。

相撲用ではない本物の軍配は初めて見たかもしれない。

酒井家九代忠徳所用の筋兜。決して華美ではないが凛々しさと華がある。

前立に沢瀉の花が用いられている(酒井家の裏紋は立ち沢潟)。

歴史に疎い私は全く知らなかった(というかむしろ逆のイメージがあった)のだが、庄内藩と西郷隆盛の間には深いつながりがあったそうで、西郷の死後もその教えは庄内地域で引き継がれていった。

一番奥からは庭園が見渡せる。

せっかくなので庭園も散策してみる。

なかなかいい季節に訪れたのかもしれない。

旧西田川郡役所。明治初期の擬洋風建築で、ルネサンス様式の模倣が要所に見られる。

中ではドールハウス作品展が開催されている。

ドールハウスというのはシルバニアファミリーのような子どものおもちゃだと思っていたのだが、西洋のお金持ちたちが画家に肖像画を描かせる感覚で自分の家のミニチュア模型を作らせたものだった、ということを初めて知った。

お金に糸目をつけない貴族の遊びだからこそ、ここまで精緻なものが作られたのだろう。私だったら今からどんなにたくさんのお金を手にしたとしてもこんなものには1円も払いたくないが、それでは芸術や文化は発展しない。経済の面から考えても、お金持ちに気持ちよく無駄遣いをしてもらうことは大切である。

小雨がパラついてきた。

旧鶴岡警察署庁舎。明治新政府の威信を示すために建設されたものらしい。確かに厳かさがあってカッコいい。

当時の取調室が再現されている。

明治時代も遠山の金さんスタイルだったのか。いや、あっちは裁判所か。

容疑者の気分になってみる。有罪な気がしてくる。

旧渋谷家住宅(多層民家)。出羽三山の山麓にあった1822年建築の民家を移築したものである。

吹き抜けではないが、天井が高い。

来客対応用の部屋は現代の和室にも通じる感じだが、

主寝室がこれはなかなか厳しい。客間で寝ればいいのに。

家の中に馬がいるという生活は憧れる。

2階には当時の生活道具や農具も展示されている。この地域でも養蚕業が盛んだったことが伺える。

重要有形民俗文化財収蔵庫と民具の蔵には、庄内地方の暮らしを今に伝える民俗資料が展示されている。

最上川で使用されていた漁船。だいぶ細長い。

一方で、海用の漁船はかなり大きい。ただ、いずれにしても少し波が高いだけで簡単に転覆しそうな気がするのだが…。

この船を動かすのに何人の漕ぎ手が必要だったのだろう。

乗合い馬そり。鶴岡と落合(月山山麓の集落)の間を昭和20年頃まで運行していたらしい。

日常生活も生業も、ひとつひとつの作業に今とは段違いの手間と時間が掛かっていたことがよくわかる。

パソコンの普及にも思うことだが、技術革新で便利になればなるほど労働時間が減っていくかと思いきや、必ずしもそうはならないところが面白い。

ちなみに、「致道」の由来は論語の一節「君子学んで以て其の道を致す」とのこと。

バスで鶴岡駅方面へ戻る。

駅の少し手前で古き良き商店街を見つけたので、衝動的に降りる。どこかに喫茶店でもないだろうかと探したが、残念ながら見つからなかった。

商店街から少し駅方面へ歩いたところで見つけた「cafe BELL」に入る。

アメリカン?メルヘン?な雰囲気の喫茶店である。

プチバニラアイスパフェとレモンティーを頂く。

美味しいが、「プチ」の定義について議論したい。久しぶりにがっつり生クリームを食べた。

鶴岡駅へ戻る。もう1泊したかった。

鶴岡16:23発のいなほ12号に乗る。

帰りは稲穂色編成である。米どころを走るにふさわしい色だ。

帰りも規格外グリーン車に課金した。

往路と同じ海側の席に座る。

そうだ、次のお米は庄内産はえぬきにするのを忘れないようにしないと。

夕焼けに照らされる日本海が見られる時間帯ではあるのだが、今日は雲のガードが固い。

今日の日本海は穏やかである。

夕焼けは見られなかったが、漆黒の日本海を堪能できたので大満足である。

定刻通り新潟に到着。E653系グリーン車、素晴らしかったです。

乗換時間が8分しかないので、急いで駅弁を買ってから18:18発のとき338号に乗る。

夕食は「のどぐろとにしんかずのこさけいくら」弁当。反則級のラインナップである。

主役級がひしめき合っており、美味しくないわけがない。新潟の食の底力はすごい。

埼玉出身なので、大宮まで来ると「帰って来たな感」が湧いてくる。

東京で東海道新幹線に乗り換え、21時前に帰宅。妻と娘はとっくに帰ってきており、ちょうど歯磨きを終えるところだった。
急いで入浴と洗濯を済ませ、23時前に就寝。本来はじっくり写真の整理をしたいところだが、明日は仕事なので睡眠時間の確保を優先させる。それに、楽しかった旅行の思い出は時間を気にせずゆっくり振り返りたい。
